コラム

事業承継  納税猶予の役員の範囲と担保提供の注意点

【 納税猶予規定での役員の範囲 】

平成21年度税制改正にて創設された 「非上場株式等に係る贈与税の納税猶予」 の適用要件の一つが、贈与者が役員でないこと、である。しかし、この特例における役員と、法人税法上の役員とではその範囲が異なるということには注意を要します。

この特例における役員とは、経済産業大臣に認められた認定贈与承継会社の役員でないことであり、ここでいう役員とは、会社法に規定する取締役、会計参与、監査役、業務執行社員、と定められております。実務上、贈与者たる先代経営者は、その贈与の時までに会社の登記簿謄本の役員から除かれる必要があるということなのです。

一方、法人税法上の役員とは、法人の取締役・執行役・会計参与・監査役・理事・監事及び精算人、使用人以外の者でその法人の経営に従事しているもの、同族会社の使用人のうち一定の要件を満たした者でその会社の経営に従事しているもの、と定められております。

つまり、法人税法上の役員の方が、その含まれる範囲が広いのです。しかし、ここで注意が必要なのです。贈与税の納税猶予の役員には該当しない理事や監事等の法人税法上の役員であったとしても、給与の支給を受けてしまうと贈与税の納税猶予の取消事由に該当してしてしまうということです。裏を返すと、先代経営者が名誉職(会長、相談役、経営顧問等…)に就いたとしても、給与等の支給を一切受けていない場合には、贈与税の納税猶予の適用に問題はないものと解されます。

【 担保提供に際しての注意点 】

上記の「非上場株式等の贈与税・相続税の納税猶予」 では、申告期限までに納税猶予分の税額に相当する担保を提供する必要があるのですが、提供する担保については、会社法の規定により株券の不発行が原則の非上場株式等であるために、経済産業大臣の認定を受けて、株主総会により定款の変更をする等の手続を要することとなります。

贈与税及び相続税の納税猶予の適用を受ける際に、経営承継受贈者が行うこととなる担保提供については、非上場株式を担保提供する場合には、供託や質権設定の承諾等を必要とすることとなります。このため、非上場会社であるがために、株主総会の特別決議等を経て定款の変更を行い、株券発行会社である旨を登記することにより、株券を発行する必要があるのです。

そもそも国税通則法に規定されている担保の種類としては、認定承継会社の非上場株式等のみに限られたものではなく、以下のような財産が認められております。なお、当該財産は第三者が所有するものでも可能ですが、いずれにせよ、税務署長が適当でないと認めるときには、その変更を求められることがあります。
1. 国債及び地方債
2. 社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
3. 土地
4. 建物、立木、登記された船舶等で保険に附したもの
5. 鉄道財団、工場財団等の財団
6. 税務署長が確実と認める保証人の保証

だたし、この非上場株式等の納税猶予については、当該非上場株式等以外の財産を担保提供した場合には、当該非上場株式等の全てを提供した場合に、その合計額が納税猶予分の税額に満たない場合であっても、納税猶予分の税額に相当する担保提供がなされたものとみなされるという規定の適用はされないので、くれぐれもご注意を。