【 改正の経緯 】
平成22年度の税制改正では、直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税枠の引き上げ、障害者控除の計算に用いる年齢定数の引き上げ、定期金に関する権利の評価等々、細部まで含めると相続税・贈与税関係だけでも例年よりも多い項目が挙げられますが、今回の目玉はやはり、小規模宅地等の相続税の課税価格の計算の特例が厳格化されたことといえるでしょう。
そもそも本特例は、昭和58年度の税制改正において、事業用または居住用の小規模宅地等の処分について相当の制約が課される点等を考慮して創設されたものですが、創設当時とは異なり、実際売買可能価額と相続税評価額との乖離幅の減少や一人でも適用可能者がいる場合には他者にも適用が可能である現行規定は、時代を鑑みて適切であるということはできず、より実態に即した特例であるべきだとの会計検査院等からの要請もあり、今回の改正に至りました。なお、本改正は平成22年4月1日以後に相続又は遺贈により取得した小規模宅地等に係る相続税について適用されることとなります。
【 改正の内容 】
前述したとおり、今回の改正は適用範囲の縮小であるといえます。実態に即した…より厳格な…などという堅苦しい文言を並べ立てても、その実は単純に可能な限り適用させたくない、といっても遠からずといったところでしょう。以下に、端的に改正点を列挙させて頂きます。
1.継続要件が絶対条件
事業用(不動産貸付業を含む。)または居住用のいずれにおいても、相続開始の時点から申告期限まで継続していない場合には、本特例の適用自体がありません。改正前は、200㎡上限で50%減額の適用が受けられたのですが、改正後は適用すら受けられなくなりました。なお、不動産貸付業に係る宅地等については、“貸付事業用宅地等”として、従来通り、200㎡上限で50%減額の適用が受けられます。
2.共同相続の場合には取得者ごとに適用の有無を判定
宅地等を共同相続した場合、改正前は相続により取得した者のうちに一人でも適用対象者が存在すれば、他の取得者にも本特例の適用があったのですが、改正後は、各取得者ごとに本特例の適用の有無を判定することとなりました。
3.特定居住用建物の特例の廃止
一棟の建物のうちに特定居住用宅地等に該当する部分が存在する場合においては、被相続人等の事業用及び居住用以外の部分についても特定居住用宅地等としての適用が受けられたのですが、改正後は、一棟の建物の敷地については、その用途ごとに床面積による按分を行って本特例を適用することとなりました。
4.特定居住用宅地等は絶対に一つだけ
これまで、状況判断という大義名分の下、ある意味曖昧ともいうこともできた居住用建物について厳格化されました。なお、本改正は一人の者の居住用宅地等は一ヶ所に限るというものであって、本特例の要件を満たす親族が二人以上いる場合には、限度面積要件の範囲内において二ヶ所の宅地等が特定居住用宅地等に該当するといったケースが考えられるので、ご注意下さい。
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