コラム

武富士事件、逆転勝訴!

通称 “武富士事件” などと称されている消費者金融最大手であった㈱武富士の創業者 故 武井保雄会長夫婦が所有していたオランダにある子会社の株式を当時香港に居住していた長男 武井俊樹元専務に贈与したことについて、当該贈与時点の長男の住所が法施行地(日本国内)にあったか否かが争点となった事件であるが、本件におけて着眼すべき点は、何といってもその税額であろう。 その贈与税額は延滞税等も含め1,500億円以上、もし原告が勝訴した場合には還付加算金等を含めると約2,000億円が還付されるという、なんとも想像し難い金額である。

第一審の東京地裁は原告である武井元専務の主張を支持したが、第二審の東京高裁ではそれを覆し課税庁を支持、そして、原告である元専務が最高裁に上告して3年以上を経た平成23年2月18日、最高裁は第二審を覆し、原告支持の判決を下した。

訴訟の争点は、武井元専務の住所が日本であったか若しくは香港であったかという一点に絞られ、第二審の東京高裁判決では、贈与税の課税を免れるために法施行地外である香港に移住したという認識の下、住所は日本にあったと判断、よって贈与税が課税されるべきという判断がなされた。 しかし、最高裁では、武井元専務が出国してからの3年以上の期間のうち3分の2以上を香港で過ごしていたという事実に着眼し、香港滞在が仮に課税回避目的であったとしても、生活の本拠が香港にあったことは否定できず、こうした課税回避が許されないのであれば、立法にて対処すべきところ現行法においては何らの手当てもされてはいない、と原告の主張を支持する判決を下した。

もっとも、裁判長は憲法第84条の租税法律主義の観点も含めて課税されることは許されるべきではないとしつつも、一般的な法感情の観点からは少なからざる違和感も生じないではないがやむを得ない、という辛口な補足意見を付け加えている。